武王(姫発)(ぱあっと顔を輝かせて)「お姉様……この前の“軍勢篇”、とってもおもしろかったですの! でも、もっとこう……敵をびっくりさせちゃうような、“変化球”みたいな戦い方ってないのかしら?」
呂尚(太公望)(小さく笑って)「ふふ、姫発ちゃん、よく気づいたわね。まさにそれこそ、兵法における《奇兵》の真髄よ。敵の意表を突く……そのために、“戦のかたち”は、限りなく自由でなければならないの」
武王(目をまんまるにして)「“かたちがない”戦い……? そんなの、どうやって指揮するんですの……?」
呂尚(指を立てて)「戦とはね、“天で戦う”わけでも、“地で戦う”わけでもない。勝ち負けを分けるのは、“神のごとき勢い”を作れるかどうか。それだけ」
武王(小さく「はわわ」と呟いて)「し、神様の勢い……!? えっと、それって──」
呂尚(続けるように)「たとえばね──」
武王(ぽかん)「な、なんだかすごくいろんな方法が……!」
呂尚(目を細めて)「そう。戦いって、決まりきった正解がないの。だから“奇”が生まれる。敵の裏をかくために、予想外を演出する。それが“奇兵”──常識の外から、勝機をつかむ一手よ」
武王(胸に手をあてて)「なんて……ロマンがありますの……! つまり、戦の中で“想像力”こそが一番の武器だってことですわね?」
呂尚(やさしく微笑み)「そう、そして……その“奇”をうまく操るには、やっぱり将としての徳が必要なの。仁がなければ兵に慕われず、勇がなければ進まず、智がなければ惑い、明がなければ敗れ、精がなければ時を逃し、警戒なければ備えを失い……」
武王(真剣な顔で)「……すべての“奇”は、信頼と能力の上に成り立ってるんですのね……」
呂尚(頷いて)「だからね。“賢い将”がいれば国は栄えるし、いなければ滅びる。それほど“指揮官”は大切なのよ」
武王(微笑んで)「お姉様のような指揮官……わたくし、なれるかしら」
呂尚(そっと頭を撫でて)「きっとなれるわ。あなたなら、“奇”すらも味方にできるもの」
武王(ぱちっとした瞳で)「お姉様……“勢”って、一体なんなのでしょう? ただ力を集めることとは、違いますの?」
呂尚(微笑を浮かべ)「ふふっ、姫発ちゃん、良い質問ね。“勢”というのは、ただの“力”じゃないの。力をどう動かすか──それが“軍勢”よ」
武王(目を輝かせて)「どう動かすか……?」
呂尚「そう。兵の動きは、敵の動きで決まるの。敵が進めば下がり、敵が止まれば動く。その変化の“はざま”にこそ、勝機が生まれるの」
武王(神妙な面持ちで)「まるで……舞を舞うときの“間合い”のようですわね」
呂尚「素敵な喩えね、姫発ちゃん♡ しかもね、“奇策”も“正攻”も、その源は尽きることがないの。勝者は、その湧き出る知恵を止めない者なのよ」
武王「でも、その知恵を敵に知られたら……?」
呂尚(ぴたりと指を立て)「そこが肝心。“至事は語らず、用兵は語るべからず”──つまりね、いちばん大切な作戦ほど、口にしてはいけないのよ」
武王「……黙して語らず、ですのね」
呂尚「その通り。敵に知られたら終わり。“兵”とは、議されず、見られず、知れられず、判じられず……それが理想」
武王「まるで幻のようですわ……!」
呂尚(すっと目を細めて)「そう、まさに幽霊のごとく。だから善く戦う者は──軍を並べる前に勝利を得、敵の刃が届く前に勝敗を決するの」
武王「……戦わずして勝つ。それこそ、最も高貴な兵法ですのね」
呂尚「ええ。そして、そうした者は──弱く見せておいて強く、遅れているようで先んじている。敵が気づいた時には、もう負けているの」
武王(唇を結んで)「では……恐れてはいけませんのね。迷ってもいけませんのね」
呂尚「“三軍の災い、狐疑に過ぎず”──軍を滅ぼす最大の原因は、恐れや迷いなの。時機が来たら、雷より速く、稲妻より鋭く。疾く、そして狂おしく!」
武王(胸に手をあてて)「わたくしも、いざという時には迷いませんっ。──信じるものを守るために!」
呂尚(そっと撫でて)「……そうね。姫発ちゃんがその心を持ち続ける限り、どんな敵にも負けないわ。だって、それが“軍勢”の本質なんだから」
太史編(元気に登場)「今回のテーマは“軍勢”だよっ! 力って言っても、ただの数じゃ勝てないの。勢(いきおい)って、もっとカッコイイ秘密があるんだ〜!」
武王(首をかしげて)「あの、お姉様……陰符って、前に教えてくださった“秘密の通信”ですよね? でも……まだ少し、難しくって……」
呂尚(優しく微笑んで)「ふふっ、陰符だけじゃ終わりじゃないのよ、姫発ちゃん。続きがあって、それが《陰書》っていうの」
武王(目を輝かせて)「まぁっ……陰符と、陰書……! 両方そろって、はじめて完全なのですねっ」
呂尚(頷きながら)「そう。陰符は“符”=印。そして陰書は“書”=文。つまりね、機密伝達は“物”と“文字”の両輪で成り立ってるってこと」
武王(小声でメモを取りながら)「ふむふむ……“符”と“書”の両方で、暗号を完全にするのですね……!」
呂尚(真面目に)「陰書は、敵にも味方にも読まれないように書く手紙のことよ。見られても分からない、でも合言葉を知ってる人だけはちゃんと読める。まさに“陰の書”ね」
武王「ふぇぇ……なんだか、とってもスパイみたいでドキドキしますわっ!」
呂尚(くすりと笑って)「ふふっ、でもね、ただスパイごっこじゃ済まないのよ。たった一文字の陰書が、十万の軍を動かすこともある。だから筆の一撇が、生死を分けるってわけ」
武王(息をのんで)「お、お姉様……そんなに重たいものだったのですね……」
呂尚「うん。だから“陰書を扱う者は、口を閉ざし、心を鎖す”って言われてる。読むのも命がけ、渡すのも命がけ。──だけど、本当に信頼してる人にだけは、託せるの」
武王(そっと手を胸に当て)「……わたくし、そんなお手紙……お姉様から受け取れるような人間になれるでしょうか……?」
呂尚(微笑みながら、そっと頭を撫でて)「もう、なってるじゃない。だって、あたし──今ここで、姫発ちゃんに陰書の秘密、ぜんぶ教えてるんだから」
武王(ぱぁっと笑顔になって)「あ……ありがとうございますっ、お姉様っ! わたくし、絶対に誰にも言いませんっ!」
呂尚「ふふ……それでこそ、わたしの王様よ♡」
太史編(ぴょこっと登場)「今回は“陰書篇”! さっそくポイントまとめてくね!」
Too史編(きゅっと手を結んで)「というわけで、陰書は“命がけの手紙”。でも、信頼できる人となら、心の奥で通じ合える──そんな絆の証なのかも、だね♡」
武王「陰書って、とても怖いけど……とても尊いものなのですね……。お姉様から学んだこと、ぜったいに胸にしまっておきますっ」
呂尚「ふふっ、それでこそ立派な王の器よ、姫発ちゃん♡」
武王(そっと顔を寄せて)「お姉様……このごろ、わたくし、ずっと考えておりましたの。もし敵国の奥深くまで軍を進めて、急な変事が起きたら──どうやって王都と連絡をとればよいのでしょう?」
呂尚(微笑んで、囁くように)「それを気にするようになったのね、姫発ちゃん。立派な王になるための第一歩よ♡ 実は、敵地深くで戦っていても、誰にも知られずに王とやりとりできる方法があるの──それが《陰符》よ」
武王(小さく息を呑んで)「いんぷ……陰の符……?」
呂尚「そう。陰符とは、君主と将軍だけが知っている秘密の暗号。状況に応じて使い分けられるよう、八つの種類があるのよ」
武王(目を輝かせて)「八つも!? 教えてくださいませっ、お姉様っ」
呂尚(少し真顔で)「では、ひとつずつ──」
武王(指折り数えながら)「……警戒を知らせるのが【六寸】、兵糧や援軍を求めるのが【五寸】……」
呂尚「そう。どれも長さで意味を示す秘密の木簡なの。しかも、内容を伝える者が遅れたり、秘密が漏れたら──即刻、処刑よ」
武王(おそるおそる)「しょ、処刑……?」
呂尚「ふふ、そう。それほどまでに《陰符》は国家機密の極み。これを守れなければ、どれほど勇敢な将軍でも──軍律の外に置かれるのよ」
武王(そっと胸に手を当てて)「……すごい。まるでお姉様との、誰にも知られない秘密の文通みたい……♡」
呂尚(目を細めて微笑みながら)「姫発ちゃん……そう思えるなら、あなたはもう──立派な軍の主、王の器よ」
武王(ぽっと頬を染めて)「お姉様……わたくし、必ず守ります。もしこの身が将となる日が来たら、陰符の秘密、命に代えても守り抜いてみせます!」
呂尚「うん……それでこそ、あたしの大切な妹分♡」
太史編(ぴょこんと登場)「やっほ〜! 今回は《陰符》のお話だよ〜! 陰(ひそか)って書くくらいだから、内容もドキドキの秘密だらけ!」
武王(ぱちっと目を輝かせて)「お姉様っ! わたくし、もっともっと士卒たちと心を通わせたいんですの。戦のとき、みんなが“我こそ先に”って走り出すような、そんな軍隊にするには──どうしたらよいのでしょう?」
呂尚(そっと頬に手を添えて)「うふふっ、姫発ちゃんらしいわね……その志、ほんと尊いわ。じゃあ、今日は“励軍”──兵たちの士気を高める方法を教えてあげる」
武王(姿勢を正して)「はいっ! お姉様のお話、心してうかがいますわ!」
呂尚(静かに頷いて)「いい? 兵たちが命を懸けてくれるのは、命令だけじゃダメなの。大事なのは──“将が、どれだけ同じ目線で寄り添ってくれるか”ってこと」
武王(首をかしげ)「同じ目線……?」
呂尚「うん。たとえばね、冬でもぬくぬくした裘(かわごろも)を着ない。夏でも扇(おうぎ)で風をあおがない。雨でも傘を差さない。兵とまったく同じように、寒さも暑さも、全部一緒に過ごすの」
武王(感動したように)「それは……とっても大変ですけれど、とっても素敵ですわ……!」
呂尚(微笑んで)「こういう将を“礼の将”っていうの。そして、険しい山道や泥道では、真っ先に馬を降りて歩く“力の将”──自分が楽してちゃ、兵たちの苦労なんてわからないもの」
武王(思わず立ち上がり)「それならわたくしも、みんなと同じご飯を食べて、同じお布団で寝ますわっ!」
呂尚(優しく微笑んで)「ふふ、そういうのを“止欲の将”って呼ぶのよ。自分だけ贅沢したり、先に休んだりしない。兵士たちがご飯を食べ終わってから、自分も食べる。火を焚かないなら、自分も焚かない──それが信頼を生むの」
武王(うっとり)「お姉様……まるで聖王さまのよう……」
呂尚「こういう将がいたらね、兵たちは、進軍の太鼓を聞いただけで胸が躍るの。“あの将のために、この命を懸けたい”って。逆に、退却の鐘が鳴ったら、悔しさで涙をこぼすくらいになるのよ」
武王(きゅっと拳を握って)「だからこそ──高い城や深い堀も、みんなが怖れず立ち向かえるのですね!」
呂尚(静かに頷いて)「そう。矢が雨のように降っても、剣が交わるその瞬間も──彼らは死を好んでるわけじゃない。ただ、心から“理解してくれる将”がいるから、全力を尽くせるの」
武王(小さな手を胸に当てて)「わたくし……そういう王になります。兵と共に笑い、共に苦しみ、共に進む──“皆と共にある”王に、きっとなってみせます!」
呂尚(その手をとって)「うん。姫発ちゃんなら、きっとなれるわ。──さあ、これが“励軍”の極意。兵法の根っこには、やっぱり“心”があるのよ♡」
太史編(えへへっと登場)「今回は“励軍”! つまり、どうやって兵士たちのやる気をMAXにするかってお話だよ〜!」
太史編(冷静にぽそっと)「“奇兵”っていうのは、普通のやり方じゃ勝てない時の“切り札”。使い方を間違えると逆に危ないけど、うまく使えば一発逆転もできる──」
まとめ
奇兵とは、想定外を操る“知略”の技術。
だがそれは、真に有徳な将にしか使いこなせない。
だからこそ、呂尚と姫発の“信頼”がそれを可能にする──