姫発(そっと目を伏せて)「お姉様……馬の戦も恐ろしく思えましたけれど、戦車となれば、なおさら……あのような巨きな車が駆ける戦場に、どう立ち向かえば……」
呂尚(微笑みながら、静かに手を取って)「怖がらなくていいのよ、姫発ちゃん。戦車はたしかに、軍の“轟く大牙”──でもね、どんな牙でも、使い方次第で王の刃にもなるし、災いにもなるの」
姫発(きょとんとして)「使い方……?」
呂尚(軽く指を立てて)「戦場には三種の兵がいるの。歩兵・車兵・騎兵。この三つ、名前は同じ“兵”でも、役目がまるで違うのよ」
姫発「まぁ……! では、それぞれどのように違うのでしょうか?」
呂尚「ふふっ、よく聞いて。歩兵は“変に応じて動く者”。車兵は“地形を読む者”。騎兵は“裏道・奇道を知る者”。──この三つ、すべてが異なる武器であり、役割なの」
姫発(真剣に頷きながら)「つまり……“同じ兵”という言葉でも、地に立つ者・車に乘る者・馬に乗る者では、まったく考え方が違うということですのね……」
呂尚(鋭くも優しく)「その通りよ♡ それを理解していないと──戦車はたちまち“死地”に沈むの」
姫発(小さな声で)「……し、死地……」
呂尚「そう。戦車には“十の死地”と“八つの勝地”がある。どんな将も、これを知らなければ必ず破れるわ」
姫発「どうか、教えてくださいませ……わたくし、どんな死地があるのか、知っておきとうございます」
呂尚(真剣な面持ちで)「行けても戻れぬ地。険阻を越えて敵を追えば、車は疲弊する。前が平らで後が険しいなら、逃げ道は消える。沼や泥、左右非対称の坂、草深く水を渡る道、車が少なく兵と噛み合わぬ地形……さらには、大雨で道が崩れて前進も後退もできぬような“落とし穴”もあるの」
姫発(手を口元に当てて)「まぁっ……それでは、ほんとうに……進めば滅び、退けば陥る……そんな恐ろしい戦地が……!」
呂尚「でも、怖がるだけじゃダメよ。そうした“十の死地”を避けることこそが、名将の証。そして逆に、八つの好機を知っていれば、戦車は“突破の牙”に変わる」
姫発「……八つの好機……?」
呂尚「そう。敵が隊列を組み終えていないとき。旗が乱れ、人馬が揺れるとき。前後左右がバラバラなとき。兵の心が迷い、恐れ、陣が崩れるとき。夜の宿営前、長旅の直後──そういう隙に、車を繰り出せば一気に崩せるの」
姫発「……それはまるで、雷のように一瞬の好機を斬る……」
呂尚(にっこり)「そうよ、姫発ちゃん。戦車はまさに雷の兵。これを使いこなす王には、敵の包囲も、千乗万騎も、恐れるものはないわ──」
姫発(胸に手を当てて)「はい……! わたくし、戦車の道を見極める目を、必ず育ててみせます……!」
呂尚(優しく微笑んで)「うん、その志があれば、もう“王”としての一歩は踏み出せているわよ♡」
太史編(ひょこっ!)「こんにちは〜っ! 今日は《戦車篇》! あのドドドド〜!って走る巨大車兵の話だよっ さっそくポイントまとめていくねっ!」