武王(姫発)「お姉様……今回は、少し困った場面について、教えてくださいまし。わたくし、軍を率いて敵国へと進軍しました。でも……敵もわたくしたちも、同じくらいの兵力。強さも、ほとんど互角。両軍、陣を構えてにらみ合っているけれど、どちらも動けませんの。ここで、敵の将軍たちを怖がらせて、兵たちを不安にさせて、陣を崩して、逃げ出させたいのですけれど……どうすればよいのでしょう?」
太公望(呂尚)「ふふっ、いい質問じゃん姫発ちゃん。こういうときはね、敵の“心の動き”をつかんで揺さぶるの。まず、うちらの軍をこっそり敵の背後10里(=40キロくらい)に移動させる。そして、その道の両脇に伏兵を配置しておくの。さらにね、別働隊として戦車や騎兵を100里も遠くに派遣して、敵の前後をぐるっと回る! 旗をいーっぱい立てて、太鼓や金属の鳴り物をガンガン鳴らして、“あれ? 敵がいっぱいいる?”“なんか包囲されてる!?”ってパニクらせるの♡」
武王「わあ……! まるで幻みたいな演出ですのね!」
太公望「でしょ? そうなると、敵の将軍たちはマジでビビる。兵たちは怖くなって、誰も助け合わなくなるの。上の人も下の人も、お互いに見捨て合って、勝手に逃げ始める――これで勝ち確♡」
武王「けれど……お姉様。もし敵の陣地がすごく堅くて、両側に伏兵を置けない場合は……? それに、車や騎兵も動かしにくくて、敵が先にうちの作戦を察知して、わたくしたちの軍の気持ちがどんより沈んでしまったら……それでも、戦って勝てますの……?」
太公望「ふふっ、姫発ちゃん、ほんっとに鋭いじゃん♡ その問い、マジで兵法の核心だわ。」
太公望「そういう時はね、勝負は“準備”で決まるの。まず、戦う予定の5日前から、遠くに斥候を派遣して、敵の動きや様子をチェック! しっかり観察して、敵が動いたらすぐに対応できるように、事前に伏兵を配置しておくの。」
武王「ええっ、5日前から……!?」
太公望「そう。で、戦いが始まったら、あえてこちらの旗を遠くに置く、陣列をスカスカに見せるの。兵たちは敵の正面に並んで、戦うフリだけしておいて……“あっ、ヤバい!”って感じでいきなり後退! でも、わざと“退却の合図(金)”を出さずに、そのまま三里(約12km)下がる。」
武王「わざと、混乱させるため……ですのね?」
太公望「そうそう♡ で、敵が“よっしゃ追撃だ!”ってノってきたところに――伏兵たちが一斉に登場! 敵の両側からも、前後からも、一気にズバッと挟み撃ち! ここでうちらの軍が一斉に突撃すれば、敵はもうどうしようもないの。崩れて、逃げて、バラバラになって、完敗ってワケ♡」
武王「すごい……! わたくし、お姉様のこと……ますます尊敬いたしますわ♡」
太公望「……ふふ♡ やーん、そんな真顔で見つめられると照れるっつーの♡」
春霞のたなびく国境地帯――静かに向かい合う二つの軍勢。空気は張り詰め、まるで風も息をひそめているよう。
武王(姫発)(ぐっと拳を握りしめて)「お姉様……わたくし、悩んでいますの。敵もわたくしも、互いに陣をしっかり張って、動かない。向こうが攻めてきたら、わたくしも迎え撃てますし、逆にこちらから仕掛けることもできそう……でも、こちらが攻めたら、逆に向こうも来るかもしれないじゃありませんの! そんな時は……どうすれば良いのでしょうか?」
呂尚(髪をくるくるしながら、ふっと微笑み)「なるほどね、姫発ちゃん♡ こういうのはね、マジで頭脳戦なの。ズバリ、作戦は“三分割”よ!」
呂尚「まずは軍を《前軍》《中軍》《後軍》の三つに分けて――前軍は、ガッツリ堀掘って壁も作って、守るふり♡ でも、旗や太鼓はチラ見せしといて、あくまで“守ってるだけ”って演出ね。後軍は、めちゃくちゃ食料貯めといて! でもね、それを敵にバレないようにするのがキモなの! で、中軍――ここが本命よ♡ 超精鋭だけ集めて、敵のスキを見て――バチッと奇襲♡ 敵が油断してる隙を突けば、まさかの不意打ちが成功しちゃうってワケ!」
武王「まぁ……♡ なんだかドキドキしてきましたわ。正面からの激突じゃなくて、裏をかくのですのね!」
呂尚(キリッと目を光らせ)「そ、でも――もし敵にこっちの作戦バレてたら? それも想定済みよ。たとえばさ、敵の精鋭が草むらとか隘路にバッチリ伏兵してて、あたしたちの動きを逆に狙ってくるとしたら――どうする?」
武王(ビクッとしながらも、真剣な眼差しに)「それは……とても危険ですわ。お姉様、どうするのですの?」
呂尚(唇をつんと尖らせて)「カンタン♡ 前軍を使って、毎日わざと挑発するの。“今日はこっち〜!”“やっぱりそっち〜!”って感じで。あと、老兵たちに木の枝とか引きずらせて、砂煙をバーッと上げさせて、太鼓や笛でド派手に音も立てちゃうの! これで敵は『なにコレ、どこが本命なの!?』って、マジで疲れちゃう♡」
武王「……っ♡ なるほどですわっ! 挑発して、混乱させて、こちらの動きを見えなくするのですのねっ!」
呂尚「そうそう! で、その間にこっちは本命の中軍で――ちゃっかり攻め込む♡ 敵はもうボロボロよ。三軍一斉にバチッと突撃しちゃえば、そりゃもう――勝つしかないでしょ♡」
武王(目を輝かせて)「お姉様……やっぱり天才ですの! わたくし、もっともっと学びたくなってまいりましたわ♡」
太史編「* 今日の兵法ポイント! *」
前軍は守る演出、後軍は補給役、中軍は突撃の主力♡ 奇襲成功のカギは、敵の意識を逸らす挑発と撹乱! 疲弊した敵に、一気に三軍で総攻撃! 勝利まっしぐら!
(風の強まる夕刻、渡河の準備中の陣中にて――)
姫発「お姉様……っ、大変ですわ! 渡ろうとしていた川が、急な豪雨で氾濫してしまいましたの! それに、まだ全軍が渡りきっておりませんのに、水嵩がどんどん……!」
呂尚(眉をひそめながらも冷静)「ふーん……これだから、天候ってやつは手強いのよね。でも、それは計画不足ってこと。兵法じゃね、こういうのが一番ヤバいの。」
姫発「えっ……わたくしの指揮が、甘うございましたの?」
呂尚(姫発の手をとって)「違う違う。こういう非常時に焦る必要はないの。だけどね――『器械の備えなし、訓練もしてない、地形の読みもない』って三重苦は絶対NG。王者の軍は、常に最悪を想定して備えておくのよ。」
姫発(小さく頷き)「は……はいっ。では、今すぐどう動くべきでしょうか?」
呂尚「よし、兵器の総点検からいこっか。これが『軍略』の真髄だよ。攻城には轒轀(ひんうん)、臨衝(りんしょう)――敵の城を登るには雲梯(うんてい)、監視には飛楼(ひろう)。行軍と停陣には、武冲(ぶちゅう)・犬橹(けんろ)で前後をガード。道を塞ぐときは、材士に強弩(きょうど)持たせてサイドからズバッと!」
姫発「武器が……戦術そのものになってるんですのね……!」
呂尚(ウィンクしながら)「その通り♡ さらに、陣地を守るには天羅(てんら)、武落(ぶらく)、行馬(こうば)、蒺藜(しつり)。昼は五色の旗で合図、夜は煙火や太鼓、鈸、笳で指令を伝えるのよ。」
姫発「わたくし、もっともっと勉強したいですわっ!」
呂尚(頭をぽんぽんしながら優しく)「いい子ね♡ 最後に、川を越えるには飛橋、転関、天潢(てんこう)、飛江(ひこう)……全部使いこなせば、どんな大雨だって渡れるんだから。」
姫発「どんな困難でも、兵器があれば必ず突破できるんですのね……!」
呂尚「そうよ。三軍の準備が完璧なら、主将は何も恐れる必要なし。これが――王者の軍ってわけ♡」
姫発「お姉様……兵器って、ただの道具じゃないんですのね……。それは、民を守るための“翼”なんですのね!」
呂尚(静かに頷き)「うん。それを活かせるかどうかが、君主の器ってことよ、姫発ちゃん♡」
太史編「やっほ〜! 今回は“軍略篇”! 雨でも川でもぜ〜んぶ兵器で乗り切る兵法の極意を紹介しちゃうよ♡」
どんな困難が立ちはだかっても、兵器の準備と訓練があれば勝てる! 「軍略篇」は、兵器=戦略という真理を教えてくれる神回なのです♡
軍議の間。地図を前にした姫発は、眉をひそめ、真剣なまなざしで問いを発する。
武王(姫発)(やや不安げに)「呂尚お姉様……もしも、もしもですのよ? 敵にぐるっと囲まれてしまって、退く道も、食糧を運ぶ道も断たれて……それでも、どうしても脱出しなきゃいけないときは……わたくしたち、どうすればいいのでしょう?」
呂尚(太公望)(きりっと瞳を光らせて)「――それ、まさに“天下の困兵”ってやつね。でも安心して、姫発ちゃん。そんな時こそ“スピード命”! もたもたしたら負けだけど、ズバッと動けば勝ちの芽はあるのよ!」
姫発(ハッと目を見開き)「暴用すれば勝ち、遅用すれば敗……ですわね!?」
呂尚「その通り♡ こういう時は“四武衝陣”って陣形で、戦車と騎兵をズラッと並べて、ドカーンと敵をびっくりさせるの! 一気に突き抜けて、突破するのよ!」
姫発「でも、お姉様! 突破したあと、わたくし……そのまま引き下がるのではなく、むしろ勝ちにつなげたいですの! 勢いそのままに!」
呂尚(少し微笑んで)「ふふっ、さすが姫発ちゃん。勇気ある王になる素質あるじゃん♡ じゃあ、突破したあとの戦術教えるね。左軍は敵の左をバシッと叩いて! 右軍は右を! 中央軍は……交互に前後からズドンと突くの。道の取り合いなんかしてるヒマないんだから、手早く分断して叩きましょ!」
姫発「でも、夜に動くって……ドキドキですわ。ばれませんの?」
呂尚「だからこそ“衔枚”ね。口に木の札を咥えて声を出させないの。みんな黒旗(玄旗)を持って、無音で移動。開道役には、足が速くてガッツのある子たちを前に出して。伏兵には、腕の立つ弓兵を後ろに配置。真ん中は、車騎と老弱兵で慎重に移動――四武衝陣を組んで、前後左右の防備もバッチリよ♡」
姫発「まあ……息を呑む作戦ですわ。でも敵に気づかれたら、どうしますの!?」
呂尚(真剣な眼差し)「即、突撃よ! 開道隊がズバッと前に出て、車騎はそのあとについて。伏兵はその場でピタッと止まって、追撃してきた敵を横から狙うの!」
姫発「なるほど……でも、お姉様。もし、前が川とか大きな堀だったら……渡れませんわ!」
呂尚「そういう場所、敵は逆に油断してるの。しかも守ってる兵も少ない。だから“飛江”“転関”“天潢”って渡河装置を使えばOK!」
姫発「でもでも、逃げる途中で辎重や食糧が足手まといになったら……」
呂尚(きりっと決意を込めて)「捨てるのよ。全部焼いちゃう。そして兵たちに伝えるの。“勇気出して突撃すれば生きられる。怯んだら……死ぬ”。それくらいの覚悟が、軍全体に火をつけるのよ!」
姫発(胸に手を当てて)「わたくし……覚悟、決めましたわ! お姉様と一緒なら、きっと乗り越えられます!」
呂尚「うん。でね、脱出したあとも気を抜いちゃダメ。斥候を出して、草木や丘、墓地みたいな場所に伏兵を置いて、追ってくる敵をピタッと止めるの。煙や火を使って合図して、先に出た部隊がそこに集合。また“四武衝陣”を組んで、最後まで整然と動くのよ!」
姫発「……すべてに意味があって、隙がなくて、なんて……かっこいいですわ……♡」
呂尚(デレ気味に微笑んで)「姫発ちゃんが将来どんな王になるか……楽しみすぎて、あたし、今から震えそう♡」
太史編(星の飾りを揺らしながら登場)「はーいっ☆ 今回は《必出篇》だよ! ぐるっと包囲されたらどうする!?っていう、ドキドキの突囲戦術をおさらいっ♡」
突囲は、兵の士気・道具の整備・作戦の正確さがすべて! でも何より大事なのは――「一丸となる覚悟」なのね♡
舞台はある日の早朝、王宮の戦術演習場。澄んだ空気の中、姫発が兵法書をぎゅっと抱えて、呂尚のもとに駆け寄ってきた。
武王(姫発)(息を弾ませながら)「呂尚お姉様っ! もし、敵にぐるっと包囲されて、前も後ろも断たれて、おまけに食糧の道まで絶たれちゃったら……わたくし、どうすればよいのでしょう!?」
呂尚(太公望)(きらりと瞳を光らせて)「――それが“困兵”ってやつよ、姫発ちゃん。四方を囲まれて、物資も絶たれて……普通なら詰み。でも、だからこそチャンスもあるのよ」
武王「チャンスですの!? この世の終わりみたいな状況なのに……?」
呂尚(鋭くも優しい笑みを浮かべて)「うん。こういう時って、“暴(はげ)しく動く者は勝つ。ぐずぐずしてると負ける”って決まってるの。まさに“疾戦”――スピード勝負ってわけ!」
武王(目をキラキラ)「わ、わたくし、もうドキドキしてきましたわっ!」
呂尚「だから部隊は“四武衝陣”に再編成よ。四方向全部に目を光らせつつ、戦車と騎兵をババーッと突撃させて、敵を混乱させるの! ビビった敵の隙を突いて、ズバッと突き抜けるのがポイント♡」
武王「“四武衝陣”……あぁ、なんだか名前からしてカッコよすぎますわっ! お姉様、突き抜けたあとも、追撃できたりするのでして?」
呂尚(にやり)「するする。脱出しても、勝機は続くわよ。左軍は左から疾(はや)く攻め、右軍は右から攻める。道なんて敵と奪い合わないでスルーして、中央軍は“前へ後ろへ”入れ替わり立ち替わり、敵をぐるぐる撹乱するの。――敵将? 逃げ出すか、袋のネズミね♡」
武王(拳を握って)「や、やはりお姉様はすごすぎますわ……っ! わたくしも、疾きこと風のごとく、民を守れる王になりますわ!」
呂尚(頬を緩めて、姫発の髪をそっと撫でる)「ふふっ、そうよ。疾戦って、ただのスピード勝負じゃなくて、敵の動揺を見抜いて、瞬時に突く“知略の技”なの。……姫発ちゃんも、だんだん将軍っぽくなってきたじゃん♡」
太史編「テーマ:疾戦(しつせん)ってなぁに?」
疾きこと、風のごとく! 困兵になったら迷わず突撃! 布陣とスピードの妙で脱出&勝利! 戦とは一瞬の機を見極める“知恵と覚悟”の勝負ですわ!
太史編「 この章の要点」
戦術の構造
まとめ
この章では、いわゆる「敗走を装った勝利戦法」の典型例が示されている。特に、撤退→伏兵→挟撃という連携は、兵法上でも非常に高等技術であり、孫子でも同様の例がある(例:作戦篇「佯北而誘之」)。精神面での揺さぶりを重視し、「戦わずして勝つ」道筋を構築している点も高評価。