姫発(不安げに)「お姉様……このごろ、わたくし、心配になってしまうのです。もし戦場で敵が強大で、戦車や騎兵がものすごい勢いで迫ってきたら──わたくしたち、どうすればよいのでしょう……?」
呂尚(やさしく微笑みながら)「あらあら、姫発ちゃんったら♡ でもそれ、とっても大事なことよ。戦にはね、“先鋒”っていう──一番槍の部隊がいるの。いち早く敵の動きを察して、チャンスが来たときだけ、一撃必中で討ちかかるのよ」
姫発(真剣に)「では、その“チャンス”とは……いかなるとき?」
呂尚(静かに目を伏せ、低く語り始める)「それを見極めるために、敵の“十四の変”を観察するの」
姫発「十四も……!? どれも覚えなければ、ですね……!」
呂尚(指折り数えながら)「そう──敵が新たに集まったばかりのとき、食事してないとき、天候が悪いとき、地形が不利なとき……」
姫発「そ、それだけじゃないですわよね……!」
呂尚(やや険しい声で)「疲れてるとき、油断してるとき、長旅の途中、指揮官が不在のとき……川を渡る最中、混乱しているとき、狭道に入ってるとき、陣形が乱れていないとき、そして──心が怯えているとき」
姫発(ぎゅっとスカートを握って)「十四……どれも、わたくしが軍を率いるようになったら、ぜったいに見落とせないことばかりですわね……!」
呂尚(ふっと笑って)「そのときは、あたしが横でちゃんと支えてあげる♡ でも──“見抜く”のは王の責務。姫発ちゃんなら、できるわ」
姫発(頬を赤らめて)「お姉様……わたくし、戦場に立つときは、この十四の変、必ず心に刻みます!」
春の霞がただよう野営地。姫発は作戦図を前に小さなおでこにしわを寄せている。
姫発「お姉様……今回の戦、三軍を分けて進軍いたしますのね? でも――それぞれ違う場所にいる軍を、決まった日にぴったり集めて、一緒に戦うなんて…… そんなこと、できるのでしょうか? みんな迷子になってしまいませんの?」
呂尚(にこっと笑い、髪をくるくる)「あら♡ だからこそ将の采配がモノを言うのよ。 あたしたちがやるのは、ズバリ――“分兵”作戦ってやつ!」
呂尚「まずね、総大将があらかじめ戦場の場所と日付を決めるの。 “この日、この城を攻める!”ってハッキリ決めてから―― すぐに檄文(げきぶん)っていう通達を、ぜ〜んぶの将軍たちに配るのよ!」
姫発(目を輝かせ)「なるほど……“○月×日、〇〇城で集合ですわよ〜!”と、ちゃんとお手紙で……♡」
呂尚「そ。しかもただの手紙じゃなくて、“この日、この時刻、絶対来い”っていう軍律つき。 “到着が早かったらご褒美、遅れたら――斬首!”ってね♡」
姫発(ビクッ)「お、恐ろしいですが……遅刻は禁物、ですのねっ……!」
呂尚「でしょ? でもこうすることで、三軍の誰もが遅れずにやってくる。 遠くの部隊も、がんばって走ってくるの♡ こうやって、全軍が一斉に集まって、一気に攻め込む! これが、分兵を成功させるカギってわけ♡」
姫発「わたくし……そんなぴったりな連携、実現できるなんて、びっくりですわ……!」
呂尚(そっと肩を抱きながら微笑んで)「ふふっ、大丈夫よ姫発ちゃん♡ あたしがきっちり采配してあげるから、心配いらないわ」
太史編(元気に登場)「今回は“分兵”のお話! 軍隊を分けて動かして、でもちゃんと集まる戦法だよ〜!」
木洩れ陽が揺れる森の奥――小鳥のさえずりが、まるで戦場に訪れた静けさのように響いていた。
姫発(ぴた、と立ち止まり)「お姉様……。森の中で戦うというのは、とても難しそうですわ……」
呂尚(太公望)(静かに頷き)「うん。林中の戦大型いってのは、ふつうの平地戦より数段ムズいのよね。でも――ちゃんとやり方があるのよ。教えてあげる♡」
姫発(真剣な表情で頷いて)「お願いいたします……!」
呂尚「まずは、三軍をそれぞれ《衝陳》っていう陣形で分けて配置するの。これはね、敵に当たってもすぐ反応できる、いわば“突撃型”のフォーメーションって感じ!」
姫発「まぁ……! 森の中でも、陣形はとっても大切なのですね……!」
呂尚「そう♡ で、配置する場所も大事。“便兵所處”――つまり、動きやすくて見通しの利くところを選ぶの。外側には弓と弩、内側には戟と盾を配置して、バランスのとれた布陣にするわ」
姫発(ふむふむとメモをとり)「弓と弩が“外側”、戟と盾が“内側”…。はいっ、覚えましたわっ!」
呂尚(木の枝を手に取り、地面に描きながら)「それから、林の中ではね……道を切り拓くの。草木を刈って道を広げて、旗を高く掲げて、部隊の位置がバレないように動くのよ」
姫発(小さく息を呑んで)「森の中でも、隠れているようで実は“見せるべきもの”はしっかり見せるのですわね……」
呂尚(ニヤリと微笑んで)「その通り♡ 旗は高く、でも兵の動きは静かに、慎重に。敵にこちらの“意図”を悟らせないってことが、森の戦いでは特に大事なのよ」
姫発(顔を上げて、強く頷き)「お姉様……。林戰って、まるで“静かなる嵐”のようですわね……」
呂尚(その言葉に目を細めて)「ふふっ……姫発ちゃん、いい感性してるじゃない♡」
呂尚「もし木がまばらな場所だったら……そこでは《騎兵》を使うの。その背後に《戦車》を配置して、隙を見て一気に攻める!」
姫発「なるほどっ! 木の多さに応じて兵の種類を変えるのですねっ!」
呂尚(キリッと指を立てて)「でも、林の中って進みにくいし、伏兵がいっぱい隠れてるかもだから――《衝陳》で備えて、前後の守りもバッチリね!」
姫発「敵が多くても、こちらが素早く動ければ、勝てますのね!」
呂尚(そっと微笑んで)「そう。敵がいくら多くても……こちらの布陣と心構えが整っていれば、絶対勝てるわ♡ そしてね……戦った兵たちは、ちゃんと休ませてあげるの。交代で戦って、交代で休んで……勝つまで繰り返す。それが、森の中で勝つ“林戰の紀(き)”――つまり、鉄則ってわけ♡」
姫発(胸に手を当てて)「わたくし……今なら、森の中でも戦える気がしてきましたわ……!」
呂尚(優しく姫発の肩を抱き寄せて)「大丈夫よ。あたしがそばにいるもん♡」
姫発(しみじみと)「森の中にも、こんなにも深い戦法があるのですわね……。お姉様から学べて、本当に良かった……♡」
呂尚(優しく微笑んで)「ふふっ、そう思ってくれるなら、あたしも嬉しいわ♡ 姫発ちゃん、どこでだって戦える立派な王様になれるわよ」
太史編「やっほー!太史編だよ♡ 今日は《林戰篇》、つまり森の中での戦いのことを分かりやすく解説しちゃうね!」
太史編(にっこり笑って)「ということで、林戦は“静と動の駆け引き”がカギなんだね♡ ちゃんと備えて、柔軟に戦えば――敵将だって逃げてっちゃうかもっ♪」
姫発(きゅっと眉を寄せて)「お姉様……これは、なんと難しい戦場ですの……!」
呂尚(太公望)(地図を広げて)「そうよ、姫発ちゃん。ここは左に山、右に川。その逆が敵。互いに隘路を挟んで向かい合う――“分險”の構えってわけ」
姫発(おそるおそる)「まるで、逃げ道のない谷底のようですわ……。こんな場所で戦えば、どちらも身動きが取れなくなって……」
呂尚(真剣な眼差しで)「そう。だからこそ、配置と準備が命取り。油断すれば、一瞬で全軍崩れる。まずは“備え”からよ」
呂尚(指先で図を指しながら)「左にいるなら、右側の山を警戒。右にいるなら、左山が危ない。敵の視線を読んで、あたしたちの“背中”をまず護るのよ」
姫発(こくりと頷いて)「背を守る……つまり、“狙われる位置”を先に想定しておくのですね……!」
呂尚(うなずいて微笑む)「その通り♡ それから、川を渡るなら舟が要るけど、もし無ければ《天潢(てんこう)》っていう即席の筏を使うのよ。でも、渡ったあとはすぐ道を広げて、戦える布陣に整えるのが先決!」
姫発(不安げに)「道も狭く、兵も多く……もし混乱してしまったら?」
呂尚(指をピンと立てて)「だから、《武冲(ぶしょう)》っていう戦車で前後を固めて、そこに強弩(きょうど)兵を配置。さらに要所には“車で作る城”を築くの。高く旗を掲げた“軍城”よ♡」
姫発(ふと顔をあげて)「……でも、それだけ堅く守っていても、戦えば兵が疲れてしまいますわ。交代は、どうすれば?」
呂尚(にっこりと)「交代こそが、勝利の鍵。三千人単位で分けて、輪番で戦わせる。戦った者は休み、休んだ者が出る。これを繰り返して、勝つまで止めない。それが“分險の極意”よ♡」
姫発(胸に手を当てて)「……なるほど……山と水に挟まれていても、考え方ひとつで突破口は開けるのですね!」
呂尚(頭を撫でながら)「ふふっ、そうよ。状況が苦しいときほど、兵法の力が輝くの。――だから、どんな險地でも恐れないで。あたしが、ずっと一緒にいるから♡」
姫発「隘路に怯えていたわたくし……お姉様のおかげで、道が見えましたの」
呂尚「その目に迷いがなくなれば、もう勝ったも同然よ♡」
太史編(ぴょこんと登場!)「やっほー! 今回は《分險篇(ぶんけんへん)》だよ〜☆」
薄曇りの空の下、黄土の丘に風が吹きつける。姫発は小さく拳を握りしめ、お姉様の背に問いかけるように目を向けた。
姫発(うつむきながら)「お姉様……もし、わたくしの軍が少なくて、敵は何倍もの兵を擁していたら……どうすれば良いのでしょう? 勝てる道など、あるのでしょうか……?」
呂尚(太公望)(ゆっくりと振り返り、やさしく微笑んで)「あるわよ、姫発ちゃん♡ あたしたち、少ない兵でだって勝てるの。その方法、ぜーんぶ教えてあげるから、ちゃんと聞いてね?」
姫発(ぱっと顔を上げて)「はいっ、お願いしますっ!」
呂尚「まずね、少ない兵で多勢を撃つときは――“日暮れ”と“伏兵”と“隘路”を使うのよ!」
姫発「日暮れと……伏兵と……?」
呂尚(指を立てて)「そう。日が落ちる時間を狙って、草むらに伏せておくの。敵が細い道を通るとき、ばちーん!と待ち伏せ攻撃♡」
姫発(メモを取りながら)「ふむふむ……狭い道を選んで、夕暮れに……」
呂尚(急に真剣な顔で)「でも、もし草もない。隘路もない。日もまだ高い。そして……大国も、味方もいない。そんな絶望的な状況だったら、どうすると思う?」
姫発(顔をこわばらせて)「そ、それは……も、もう……だめですわ……!」
呂尚(すっと姫発の頬に手を添え、優しく)「だめじゃないわ、姫発ちゃん♡ そのときこそ、“智謀”の出番よ」
呂尚(指先をくるくる回して)「まず、敵将の心を揺さぶるの。嘘の情報、ニセの部隊、偽りの道筋――“こっちが本隊よ~”ってフリをして、敵を遠回りさせるのよ。そしたら、ちょうどいい時間に、ちょうどいい場所に誘導できる♡」
姫発(目を輝かせて)「わたくしの思うように……敵を、動かすのですのね!」
呂尚「そう。敵が水を渡りきってない。宿営地にたどり着けてない。そんなバラバラな瞬間を狙って、――伏兵が左右から! 馬車と騎兵が前後から! その一撃で、敵将はパニック♡ 軍は混乱して、いくら兵が多くたって意味なし、ってわけ♡」
姫発(頬を赤らめて)「お姉様……かっこいい……!」
呂尚(照れ隠しに髪をくるくる)「まぁ、あたし天才だから?♡ それにね、戦うだけじゃないの。外交っていう手段もあるのよ」
姫発「外交……ですか?」
呂尚「うん。大国の王様には、丁寧にお願いする。近くの国の将軍には、お礼とともに味方になってもらう。そのためには――“おカネはたっぷり、言葉はへりくだって”ってね♡」
姫発(こくんと頷いて)「なるほど……お金と礼節ですのね……!」
呂尚(ニッと笑って)「そう! それがね、“弱者の武器”なのよ♡」
姫発「少ない兵でも……工夫次第で勝てるのですね……! わたくし、勇気が湧いてまいりましたわ!」
呂尚「うん……その調子♡ 少なくても、負ける理由にはならない。勝てるかどうかは――“知恵と決意”次第よ、姫発ちゃん♡」
太史編(ぴょこっ)「こんにちは~! 今回は《少衆篇》のまとめだよっ!」
太史編(ぴょこっ)「は〜い! 今日は《武鋒篇(ぶほうへん)》っていう“先鋒隊”のお話だよっ!」