武王・姫発(小声で)「お姉様…ちょっと聞いてもいいかしら…?」
太公望・呂尚(ちらと視線を上げ)「……あぁ? 今日は何? また兵法の続き?」
姫発(まじめに)「もし、敵の国に軍を進めていたら、ちょうど酷い寒さとか、暑さとか、大雨が続いて…溝も壕も崩れちゃって、守るべきところも守れなくなって、哨戒の兵たちも怠け始めて、皆が油断してる中で…敵が夜に襲ってきたら…」
呂尚(軽くため息まじりに)「……ふん、ありがちな状況ね。つまり、三軍がぜーんぶ油断して、上下がパニックってるときに夜襲かけられたらどうすんの?って話でしょ?」
姫発(こくりと頷く)「はい…!」
呂尚(真剣に目を細めて)「兵を率いるってのはね、まず“油断しない”ってことが前提。『三軍は、備えあれば堅し、怠れば必ず敗れる』…これは兵法のイロハよ。」
姫発(メモしながら)「はい…“戒めこそ、三軍の命”ですね…!」
呂尚「夜でも垒(とりで)には絶えず“誰何(すいか)”を叫ぶ哨戒を立てて、人は旌旗を持ち、内と外が互いに合図で繋がるようにしておく。金や鼓の音を絶やさず、皆が常に外を向いて、戦えるようにするの。わかった?」
姫発「はい、お姉様!」
呂尚「でね、一屯は三千人で構成して、それぞれにしっかり“戒めと約束”を叩き込むの。…こうして備えが整ってれば、敵が来てもね、あいつらは“うわ、ガチ警戒されてる!”ってビビってすぐ帰ってくわ。」
姫発(嬉しそうに)「うふふ、お姉様の軍、かっこいい…!」
呂尚(すこし照れながら)「……バカね。で、そこからが本番。敵が油断して帰ろうとしたとこに、こっちの精鋭をぶつける。後ろからスパーンとね。」
姫発「でも…もしその敵が、お姉様のそういう行動を先に読んでて…わざと撤退するふりをして、伏兵を隠してたら…?」
呂尚(目を細めてニヤリ)「……やるじゃん、姫発。そういう想定、大事よ。」
姫発「えへへ…」
呂尚(真面目なトーンで)「そんなときは、軍を三隊に分けて慎重に追跡。絶対に敵の伏兵の“中”に入らないようにね。三隊が同時に敵に接触して、後ろを叩き、側面を突き、明確な号令で一斉にズバッと攻める。そうすりゃ、伏兵だろうが混乱して負ける。」
姫発(キラキラ目で)「……お姉様、やっぱり凄いです…!」
呂尚(ふっと優しい笑みで)「当然でしょ? 兵法を語らせたら、アタシが最強なんだから♡」
太史編「金と鼓──それは軍の呼吸」
古来、戦場では「金(鐘)」と「鼓(太鼓)」を合図に、進軍・停止・戦闘・撤退などを制御しました。本篇は、そんな“軍の生命線”ともいえる金鼓の重要性を通じて、夜襲時の防衛・反撃・追撃の基本構造を説いています。
本篇のポイント
まとめ
本篇では夜襲への警戒と対処、そして敵の偽装撤退への追撃戦術が中心テーマ。姫発の「素直な学び」と、呂尚の「戦術的冷徹さ」が対比されつつも信頼で結ばれる構成。兵法としては伏兵対策と、追撃時の冷静さが肝。