穏やかな午後。文王は呂尚と共に歩きながら、静かに問いを発した。
文王「ねえ、呂尚。わたくし──国を治めるってどういうことなのか、ほんとうに知りたいの。どうすれば主君が敬われ、民が安心して暮らせるのでしょう?」
呂尚(即答で、ツンなしの真顔)「民を、愛すること。それだけ。」
文王「まあ……それだけ?」
呂尚「そう。“民を愛する”って、本気でやれば、君主は自然に尊ばれるし、民も安心するの。ぜんぶ、そこに集約されてるのよ。」
文王「では──その“愛する”というのは、どういうことなのかしら?」
呂尚(息を吸い、真剣な声で)「民にとって“利”を与え、害を与えないこと。民の暮らしを“成し”、決して“壊さない”こと。生かして、殺さない。与えて、奪わない。楽しませて、苦しめない。喜ばせて、怒らせない──それが“愛する”ってことよ。」
文王「まあ……一つ一つが、心に響くわ。けれど、それはどうすれば具体的に実現できるの?」
呂尚「聞きたい? よし、じゃあ教える。」
呂尚(指を折りながら、語り始める)「民が仕事を失わなければ、それは“利”になる。農作業のタイミングを外さなければ、それで“暮らしが成る”。無実の人を罰しなければ、人の命が“守られる”。税や取り立てを軽くすれば、それは“与える”ことになる。宮殿や高台を建てすぎなければ、民は“安らぐ”。役人が清らかで、民を煩わせなければ、民は“喜ぶ”──」
文王「それが“六つの愛”……!」
呂尚「逆に──仕事を奪えば、民は困る。農作を邪魔すれば、暮らしは壊れる。無罪の人を罰せば、命を奪うことになる。税を重くすれば、それは“奪い”になる。建築ラッシュで労役を強いれば、民は苦しむ。官吏が汚職や横暴をすれば、民は怒り出す──」
文王「善政とは、“民の身に何が起きているか”を、一つ一つ想像して、寄り添うことなのね……」
呂尚(しっとりとした声で)「そう。国をちゃんと治めたいなら──民を“自分の子”のように思うの。兄が弟を想うように、王が民を想うべき。民が飢えや寒さに苦しめば、共に悩む。民が働きすぎて疲れたら、一緒に悲しむ。民への褒美や罰も、自分に下されるように考えて、税や取り立ても、自分の財を差し出すように思って──」
文王(静かに目を伏せ、深くうなずく)「それこそが、“真の君主”なのですね……。民を愛する、そのすべての道を──わたくし、決して忘れません。」
「爱民而已(民を愛するだけ)」ってホントにそれだけ?
ホントだよ〜! でも、「愛する」って言葉にはい〜っぱい具体的なことが含まれてるんだよ!
民を愛する「六つのこと」!
愛民の君主ってどんな感じ?
自分が民だったら、って想像するの! 税を取るなら「自分の財布から取る」くらいの気持ちで。賞罰を下すなら「自分が受ける」と思って決める。飢えたり寒かったり、苦しんでる民を見たら、一緒に泣ける王様──それが、太公が言う「理想の君主」なんだよっ!