ああ、陛下、わたくし韓非姫は、韓の国のお姫様として、この乱れた世を心から憂いておりますわ。秦の始皇帝陛下の御前に参上し、命を賭けてお話を申し上げますのよ。どうか、わたくしの小さな声に耳を傾けてくださいますませ。天下統一の道を、わたくしなりに可愛らしく、でも真剣に語らせていただきますわね。
わたくし、聞きましたわ。知らないことを申すのは愚かですのよ。知っていながら黙っているのは、陛下への不忠ですわ。不忠は死罪、間違ったことを申しても死罪ですわ。それでも、わたくし、命をかけて見たこと聞いたことを全てお話し申し上げますの。陛下、どうぞお裁きくださいませ。ああ、わたくしの心臓がドキドキしますわ…でも、陛下のためなら、どんな罰も甘んじて受けますのよ!
わたくし、伺いましたわ。燕や魏、楚、斉、韓が手を組んで、合縦なんてものを作り、秦に立ち向かおうとしているんですって? ふふ、笑っちゃいますわ! 世の中には三つの滅び方があるんですのよ。乱れた国が整った国を攻めたり、邪悪な国が正しい国を攻めたり、道理に逆らう国が天の理に従う国を攻めたり。そんなの、全部滅亡への道ですわ。陛下、この策略、滑稽じゃありませんこと? わたくし、陛下の御前でこんなお話を申し上げて、失礼じゃありませんかしら? でも、真実ですのよ!
今の六国、みっともないですわ。国庫はスカスカ、倉庫はガラガラ。それなのに、国民を総動員して何百万もの軍を動かすんですって。将軍はカッコつけて「死ぬまで戦う!」なんて叫ぶけど、千人にも満たないんですのよ。戦場では、剣が目の前に、処罰の斧が後ろに迫っても、逃げ出すばかり。兵士が悪いんじゃありませんわ。君主がダメなんですのよ。賞を約束しても出さない、罰を宣言しても実行しない。約束が守られないから、誰も命をかけませんわ。陛下、こんな国が秦に敵うわけありませんわよね? ああ、わたくし、六国の愚かさを思うと、ため息が出てしまいますわ。
秦は素晴らしいですわ! 法はビシッと決まっていて、賞と罰は絶対ですのよ。功績を上げた者は必ず褒められ、怠けた者は必ず罰せられます。秦の民は、普段は敵なんて見たことのない若者でも、戦場では足を踏み鳴らし、服を脱ぎ捨て、剣や炎に突っ込んで死ぬまで戦いますわ。なぜですって? 命をかける価値があるからですわ! 一人が十人を倒し、十人で百人を、百人で千人を、千人で万人を倒せる。そんな万人の軍があれば、天下は秦のものですわ。秦の領土は数千里、軍は百万を超え、法は厳格、土地は有利。こんな国を敵に回して、勝てる国なんてありませんわ。陛下、秦なら天下を簡単に手に入れられますわよ。ああ、わたくし、秦の強さを思うと、心がわくわくしますの!
でも、陛下、なぜ秦はまだ天下を統一できていないんでしょう? 軍は疲れ、民は困窮し、倉庫は空っぽ、田畑は荒れ、近隣の国は従いませんわ。覇王の名も得られていません。理由は簡単ですわ。秦の家臣が本気で忠誠を尽くしていないからですのよ。わたくし、はっきり申し上げますわ。陛下、このままではいけませんわ。ああ、わたくし、陛下のお立場を思うと、胸が痛みますの…どうか、わたくしの言葉を御心に留めてくださいませ。
かつて秦は楚をボロボロに破り、都を落とし、洞庭湖や江南を奪いましたわ。楚の君臣は逃げ出し、陳の城に隠れたんですのよ。あの時、追い討ちをかければ、楚は滅び、民と土地は秦のものになりましたわ。斉と燕を弱らせ、韓、魏、趙を圧倒して、一気に覇王の名を手にできたはずですのに! なのに、秦の家臣は軍を引いて楚と和解してしまいましたわ。陛下、これが秦が覇王になるチャンスを逃した一回目ですわ。もったいないですわよ! わたくし、そんな過ちを思うと、涙が出てきそうですわ。
また、六国が華陽で合縦を組んだとき、陛下はこれを破り、魏の都・大梁を包囲しましたわ。あと少しで大梁を落とせば、魏は滅び、楚と趙の同盟は崩れ、趙は危うくなり、楚は迷ったはずですわ。なのに、家臣は攻めきれず、軍を引いて魏と和解してしまいましたのよ。陛下、これが二回目の失敗ですわ。惜しすぎますわ! ああ、わたくし、陛下の御業がこんなにも阻まれているなんて、悔しくてなりませんわ。
趙は中央の国、いろんな民が住む場所ですけど、統制が取れていませんわ。号令は乱れ、賞罰は信用されず、地形も不便。民は力を尽くしません。まさに亡国の形ですわよ。それなのに、趙は長平で韓の上党を争い、陛下は武安を奪いました。あの時、趙は君臣の信頼がなく、邯鄲は守れなかったはずですわ。邯鄲を落とし、代や上党を攻めれば、戦わずに多くの土地が手に入りましたのに! 趙が滅べば、韓も終わり、楚と魏は孤立し、斉と燕も弱りますわ。なのに、家臣は軍を引いて趙と和解しましたのよ。陛下、これが三回目の失敗ですわ。悔しいですわ! わたくし、こんなにもチャンスを逃すなんて、信じられませんのよ。
陛下の聡明さと秦の軍の強さをもってしても、覇王の業を捨て、土地を得られず、亡国に騙されてしまうなんて、なんて家臣の無能なことでしょう! 趙は滅びるはずなのに滅びず、秦は覇者になるはずなのに覇せず、天下は秦の家臣のダメさをしっかり見抜きましたわ。邯鄲を攻めても落とせず、武器を捨てて逃げ帰り、別の戦いでも勝てず、疲弊して退却。天下は秦の限界を三度も見ましたわ。内では家臣の策がダメで、外では軍が疲れ果てています。今、秦は兵も民も疲れ、蓄えはなく、田畑は荒れ、倉庫は空っぽ。外では六国が固く結託して秦を狙っていますわ。陛下、このままじゃ合縦を崩すのは難しいですわよ。どうかお考えくださいませ! ああ、わたくし、陛下のお苦しみを思うと、心が張り裂けそうですわ。
わたくし、こう聞きましたわ。「戦々兢々、日々慎重に進めば、天下は手に入りますわ」って。どうしてそう思うかって? 昔、殷の紂王は百万の軍を持ち、淇水や洹水を飲み干す勢いだったのに、周の武王はたった三千の兵で一日で都を落とし、紂王を捕らえましたわ。誰も紂王を惜しまなかった。なぜですの? 力を尽くしたからですわ。また、智伯が三国の軍で趙の襄子を晋陽で攻め、水攻めで城を落としかけたのに、襄子は家臣の張孟談を送り、韓と魏を寝返らせて智伯を倒しましたわ。陛下、秦には数千里の領土と百万の軍、厳格な法と有利な土地があります。力を尽くせば、天下は必ず秦のものですわ! わたくし、陛下の御業が輝くのを、心から信じておりますのよ。
秦には数千里の領土、百万の軍、厳格な法、有利な土地がありますわ。天下に並ぶものはありません。これで戦えば、天下は秦のものですわ! わたくし、命をかけて陛下に申し上げます。六国の合縦を壊し、趙を落とし、韓を滅ぼし、楚と魏を従え、斉と燕を味方につけ、覇王の名を成し、四方の国を朝拜させますわ。もしわたくしの策が失敗したら、どうぞわたくしを斬って国の見せしめにしてくださいませ。陛下、わたくしの忠義、受け止めてくださいまし! ああ、わたくし、この進言で陛下のお役に立てるなら、どんな運命も幸せですわ…。