武王(そっと顔を寄せて)「お姉様……このごろ、わたくし、ずっと考えておりましたの。もし敵国の奥深くまで軍を進めて、急な変事が起きたら──どうやって王都と連絡をとればよいのでしょう?」
呂尚(微笑んで、囁くように)「それを気にするようになったのね、姫発ちゃん。立派な王になるための第一歩よ♡ 実は、敵地深くで戦っていても、誰にも知られずに王とやりとりできる方法があるの──それが《陰符》よ」
武王(小さく息を呑んで)「いんぷ……陰の符……?」
呂尚「そう。陰符とは、君主と将軍だけが知っている秘密の暗号。状況に応じて使い分けられるよう、八つの種類があるのよ」
武王(目を輝かせて)「八つも!? 教えてくださいませっ、お姉様っ」
呂尚(少し真顔で)「では、ひとつずつ──」
武王(指折り数えながら)「……警戒を知らせるのが【六寸】、兵糧や援軍を求めるのが【五寸】……」
呂尚「そう。どれも長さで意味を示す秘密の木簡なの。しかも、内容を伝える者が遅れたり、秘密が漏れたら──即刻、処刑よ」
武王(おそるおそる)「しょ、処刑……?」
呂尚「ふふ、そう。それほどまでに《陰符》は国家機密の極み。これを守れなければ、どれほど勇敢な将軍でも──軍律の外に置かれるのよ」
武王(そっと胸に手を当てて)「……すごい。まるでお姉様との、誰にも知られない秘密の文通みたい……♡」
呂尚(目を細めて微笑みながら)「姫発ちゃん……そう思えるなら、あなたはもう──立派な軍の主、王の器よ」
武王(ぽっと頬を染めて)「お姉様……わたくし、必ず守ります。もしこの身が将となる日が来たら、陰符の秘密、命に代えても守り抜いてみせます!」
呂尚「うん……それでこそ、あたしの大切な妹分♡」
武王(ぱちっと目を輝かせて)「お姉様っ! わたくし、もっともっと士卒たちと心を通わせたいんですの。戦のとき、みんなが“我こそ先に”って走り出すような、そんな軍隊にするには──どうしたらよいのでしょう?」
呂尚(そっと頬に手を添えて)「うふふっ、姫発ちゃんらしいわね……その志、ほんと尊いわ。じゃあ、今日は“励軍”──兵たちの士気を高める方法を教えてあげる」
武王(姿勢を正して)「はいっ! お姉様のお話、心してうかがいますわ!」
呂尚(静かに頷いて)「いい? 兵たちが命を懸けてくれるのは、命令だけじゃダメなの。大事なのは──“将が、どれだけ同じ目線で寄り添ってくれるか”ってこと」
武王(首をかしげ)「同じ目線……?」
呂尚「うん。たとえばね、冬でもぬくぬくした裘(かわごろも)を着ない。夏でも扇(おうぎ)で風をあおがない。雨でも傘を差さない。兵とまったく同じように、寒さも暑さも、全部一緒に過ごすの」
武王(感動したように)「それは……とっても大変ですけれど、とっても素敵ですわ……!」
呂尚(微笑んで)「こういう将を“礼の将”っていうの。そして、険しい山道や泥道では、真っ先に馬を降りて歩く“力の将”──自分が楽してちゃ、兵たちの苦労なんてわからないもの」
武王(思わず立ち上がり)「それならわたくしも、みんなと同じご飯を食べて、同じお布団で寝ますわっ!」
呂尚(優しく微笑んで)「ふふ、そういうのを“止欲の将”って呼ぶのよ。自分だけ贅沢したり、先に休んだりしない。兵士たちがご飯を食べ終わってから、自分も食べる。火を焚かないなら、自分も焚かない──それが信頼を生むの」
武王(うっとり)「お姉様……まるで聖王さまのよう……」
呂尚「こういう将がいたらね、兵たちは、進軍の太鼓を聞いただけで胸が躍るの。“あの将のために、この命を懸けたい”って。逆に、退却の鐘が鳴ったら、悔しさで涙をこぼすくらいになるのよ」
武王(きゅっと拳を握って)「だからこそ──高い城や深い堀も、みんなが怖れず立ち向かえるのですね!」
呂尚(静かに頷いて)「そう。矢が雨のように降っても、剣が交わるその瞬間も──彼らは死を好んでるわけじゃない。ただ、心から“理解してくれる将”がいるから、全力を尽くせるの」
武王(小さな手を胸に当てて)「わたくし……そういう王になります。兵と共に笑い、共に苦しみ、共に進む──“皆と共にある”王に、きっとなってみせます!」
呂尚(その手をとって)「うん。姫発ちゃんなら、きっとなれるわ。──さあ、これが“励軍”の極意。兵法の根っこには、やっぱり“心”があるのよ♡」
太史編(えへへっと登場)「今回は“励軍”! つまり、どうやって兵士たちのやる気をMAXにするかってお話だよ〜!」
武王(ちょこんと座って)「お姉様……将軍って、どうすればみんなに“信頼される存在”になれるのかしら?」
呂尚(頷いて)「いい質問ね、姫発ちゃん♡ 将軍にとって“威厳”ってすごく大事なの。軍って、信頼と緊張感がなきゃ崩れるから」
武王(うるうる瞳で)「じゃあ、どうやって“威厳”を作ればよいのでしょう? みんなに“すごい”って思われたいですっ」
呂尚「ふふっ、じゃあ教えてあげる♡ まずね――“威厳”を作るには、上の人をしっかり罰して、下の人にはちゃんと褒美をあげること!」
武王「えっ、上の人を罰するの??」
呂尚「そうよ。たとえば、三軍に緊張が走るくらい、偉い人をひとり処罰するの。『あの人でも処処されるんだ……』って全軍が思えば、規律が引き締まるのよ」
武王「すごい……逆に、褒美は?」
呂尚「それはね、馬の世話してる子とか、あまり目立たない兵士にあげるの。そうすると、みんな“ちゃんと見てくれてるんだ”って思って、すごくやる気になるの♡」
武王(ぱぁっと明るく)「まあっ、それってすごく素敵なご褒美の仕方ですわね!」
呂尚「つまりね、“処罰は上まで届き”“賞は下まで届く”――これが『威信の本質』なの」
武王「なるほど……わたくし、すこしわかってきましたわっ」
呂尚(にっこりして)「姫発ちゃん、素直でえらい♡ 兵法ってね、こういう細やかな配慮がすっごく大事なの」
太史編(ぱたぱた登場)「今回は“将威篇”だよ〜! 将軍が“どうやって信頼される存在になるか”を教えてくれるのっ!」
太史編「今回も兵法って“人の心”をよく見てるんだな〜って思ったでしょ? それが、太公望お姉さまのすごいとこなんだよっ♡」
武王(ちょこんと座って)「お姉様……大事な戦いのとき、将軍ってどうやって選ばれるのですの?」
呂尚(うなずいて)「うん、大事な質問ね。戦のとき、王さまはまず正殿を避けて、別の場所で将軍を呼び出すの。真剣な雰囲気で“国の運命は、あなたにかかってます”って言うのよ」
武王(目をまるくして)「まぁ……重たいお役目ですわ……!」
呂尚「うん、それだけ将軍って存在が大きいの。命令を受けたら、太史が占いして、三日間斎戒して、それからお寺に行って──“吉日”を選んで、いよいよ斧と鉞(まさかり)を授けるの」
武王「儀式って、そんなにちゃんとやるんですのね……!」
呂尚「そう。王さまは“この武器を手にすることで、天の上から地の底まで、軍のことは全部任せます”って伝えるの。だから将軍は、その瞬間から命がけなの」
武王(小さく手を握って)「責任の重さ……感じますわ」
呂尚(真剣な眼差しで)「それだけじゃないの。兵は多ければいいってわけじゃないし、死ぬ気で戦えば勝てるわけでもない。仲間の意見をちゃんと聞くこと、士卒と苦楽を共にすること、そういうことが大事なのよ」
武王「……わたくし、みんなより先にごはん食べたり、涼しいとこにいたりしたら……駄目ですの?」
呂尚「当然ダメっ♡ 兵たちが座るまで、将軍は立ってるの。兵たちが食べるまで、将軍は待ってる。暑くても寒くても、同じ環境で過ごす。そうすれば、みんな本気でついてきてくれるの」
武王(うっとりした目で)「ああ……お姉様、本当にかっこいいですわ……!」
呂尚(少し照れて)「ふふっ、あたしを見習うといいわ♡ でもね、任命された将軍も言うの。“軍のことは、王さまが遠くから口出ししないで。任せてくれないなら、あたしは引き受けません”って」
武王「なるほど……お任せするからこそ、責任を果たすのですねっ!」
呂尚「そう。命がけだから、勝つまでは生きて帰らないって覚悟なのよ」
武王(小さく息をのんで)「わたくし……ちゃんとした“任せ方”ができる王様になりますわっ!」
呂尚(にっこり)「うん……君がそう言ってくれるなら、きっと大丈夫♡」
太史編(ぴょこんと登場)「今回は“立将”っていうお話だよ〜! つまり、“将軍ってどうやって任命されるの?”ってこと!」
姫発「あのっ、お姉さま……! わたくし、お国のために立ち上がる時、立派な将軍さまを選ばなくちゃって思うんですの。でも、どなたが本当に優れていらっしゃるのか、どうやって見抜けばよろしいのでしょう?」
呂尚「いいとこに気づいたじゃん♡ 武をもって天下を治めるなら、まずは“中身のある人材”をちゃんと見極めなきゃね。人は見かけじゃないって、ほんっと大事なんだから」
呂尚「外見と中身がズレてるタイプ、けっこういるんだよ? たとえば――」
姫発「まぁっ……まるで仮面舞踏会みたいでございますわ! こんなに見かけと中身が違う方がいらしたら、わたくし騙されてしまいそう……」
呂尚「うんうん、だからね、みんなが『こいつはダメ』って言う人こそ、聖人には光って見えるもんなのよ。見る目がなきゃ、ホントの英雄はわかんないってこと♡」
姫発「では……どうやって本物を見抜けばよろしいのでしょう?」
呂尚「ふふっ、お姫様ったら真剣♡ じゃあ特別に“将を見抜く八つの試練”、教えてあげるね!」
姫発「あ、あの……お姉さま、わたくし、ちょっとドキドキしてまいりましたの…… こんなにたくさんの試練を越えられる方、ほんとうにいらっしゃるのかしら?」
呂尚「見つけるのは大変だけど、だからこそ見つけたら大切にするのよ♡ この八つのチェックを全部クリアできた人――それが、ホンモノの“将”ってやつよ!」
八征皆備、則賢、不肖別矣。
姫発「八つの試練で、真の将とそうでない方とが分かれる…… わたくし、お姉さまのおかげで、すこし賢くなれた気がいたしますの!」
呂尚「うんうん、今日はよくがんばったじゃん♡ でもまだまだこれから。あたしの兵法レッスン、ちゃんとついてきなさいよね?」
太史編(ぴょこんと登場)「やっほ〜! 今回は《陰符》のお話だよ〜! 陰(ひそか)って書くくらいだから、内容もドキドキの秘密だらけ!」